2019-01-01から1年間の記事一覧

枯れ葉

綺麗な絵の具からなくなった誤読を恐れるようになった下手な口笛を吹いても歩き方さえ思い出せない暗がりが怖くなくなった授業中手を挙げなくなった線路の上に寝転がっても美しい虫さえもう触れない誕生日が来て窓を塞いだ背が伸びたので枯れ葉を買った遠く…

歩道橋

夢の中でも夢を見ながらいろんなことが終わっていった自分で髪を切っている時この世の全部が不思議に思えた僕らはただの現在できっと眠っているのと同じ何処か遠くで上がった花火が空っぽのままふっと笑ったあの人はもう詩を書かない僕も素面では踊れない夏…

御神籤工場

御神籤工場に興味があった。 Y県に行けば御神籤工場を見学することができるという情報を聞きつけた私は、アルバイトを無断欠勤し、Y県に向かった。 道中、御神籤工場に思いを巡らせる私の胸は高鳴り、持参した文庫本の文字を目で追っても内容は入ってこなか…

小蝿

まだ五月だというのに浴室の排水溝から小蝿が湧いているというのは、まったく異例の事態である。 「小蝿、殺す」 そこで私は薬局へ行き、キンチョーが販売している「コバエがいなくなるスプレー」を購入、自宅へ戻り浴室の排水溝に噴射した。 これが楽しかっ…

夏風邪

夏風邪を引いた。 京都の街は少なくとも私の脳内において半狂乱、半ば狂乱、いや、全狂乱、全う狂乱、とにかく狂乱。 現在地は鴨川デルタである。なぜ夏風邪を引いておるのに自宅、あるいは内科医院にて養生しておらぬのかと問われれば、答えは「知るか」。…