御神籤工場

御神籤工場に興味があった。

Y県に行けば御神籤工場を見学することができるという情報を聞きつけた私は、アルバイトを無断欠勤し、Y県に向かった。

道中、御神籤工場に思いを巡らせる私の胸は高鳴り、持参した文庫本の文字を目で追っても内容は入ってこなかった。

工場は果たして山奥にあり、最寄駅からバスとタクシーを乗り継いで約二時間を要した。

案内係の男性によって簡単な注意事項が告げられた後、指示に従って工場の中へ入った。

なんとも愉快な空間であった。無機質な紙と油のにおい。機械のガッチョンガッチョンという轟音。製造ラインの流れに乗って印刷、裁断される大量の大吉、吉、中吉、小吉、末吉、凶。私はここに来て良かったと思った。

数日後、近所の中学生がこの御神籤工場に火を放った。工場は全焼した。

私はアルバイトをクビになった。