修学旅行の話

高校の時の修学旅行中に起こった話をしようと思う。

 

修学旅行というものは往々にして、昼間の自由行動や観光地探訪などのイベント以上に夜の宿舎でのバカ騒ぎが楽しいものである。

また、教師陣が生徒に対して設定する宿舎でのルールというものは必要以上に厳格であることが多く、高校生などというものに残された楽しみはそのルールのギリギリを攻める、あるいは逸脱するスリルを味わうことぐらいのものだ。

 

ごく普通の平凡な高校生の一人であった僕は、例に漏れずそういったスリルを求めて、かと言って派手に逸脱する度胸がある訳でもなく、「消灯時間を過ぎてから他のクラスの友人の部屋に行ってひたすらベッドの上を飛び跳ねる」という遊びをしていた。

今考えると猿でもすぐに飽きそうな遊びであるが、当時の僕は修学旅行という非日常の中にあり、また、先述した通りのスリルも相まって、友人と共にベッドの上をひたすら飛び跳ねるだけで大量のアドレナリンが脳内に分泌される状態にあった。

ゲラゲラ笑いながら飛び跳ねていた。

 

当然ベッドの上を飛び跳ねていればそれなりの騒音が辺りに響き渡るため、それを聞きつけた教師が部屋を訪れて僕たちは叱責を受けることになるのだが、ここまでは特に問題ないのである。

 

僕たちが叱責を受けた翌日の夜。

 

学年の生徒と教師全体の集会が行われた。

この時点で僕の脳内にある考えは、何の集会だろう、面倒くさいなあ、ぐらいのものである。

 

話し始める教師M「何で集められたんかわかる人もこの中にはおるよなあ?」

何を言ってはるの…?…まさか…いやまさかなあ…

 

M「わかっとるよなあ?やってはいけないことをやった人間がこの中におるよなあ?出てきてもらおか?」

この時点で僕はまさかと思いながらも油汗を流している。

大体、僕は人前に立つのがかなり苦痛である上に、学年の生徒全員の前で公開処刑を受けるとなると、たぶん泣いてしまうぐらいには嫌なのだ。

 

まさかという気持ちが確信めいたものに変わっていくうちに、友人の部屋に行って飛び跳ねただけで何故そのような辱めを受けなければならないのかという疑問、怒り、悔しさ、悲しさで僕の心拍数は極端に上昇、頬は紅潮、目は充血し、もうほとんど泣いていた。

無邪気に飛び跳ねていた時はあんなにも楽しかったのに。

 

M「じゃあ前出てきてもらうぞ」

終わりだ、終わった。

M「〇〇、××、△△」

同じ部屋にいた友人の名前ではない。

でも次は僕だ、終わった。

M「☆☆…以上」

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名前を呼ばれた数名の生徒たちが前に出る。

M「今日が何の日かわかるか?」

 

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…はいはいそーゆーことね…?

 

バンッッッッッッ

突如開く会場後方の扉。

 

「HAPPY BIRTHDAY!!!!!!!!」

 

場内拍手喝采

 

みんな笑顔。

 

 

 

 

 

ふざけるな。

 

俺が流した油汗を返せ。今すぐ返せ。

 

その後僕は泣きそうな顔のまま誕生日を迎えた生徒たちを祝福し、世の中の一切の誕生日サプライズを敵視するようになった。